『LUCY』『SPEC』などに登場する「人間の脳は10パーセントしか使われていない」神話のホントでウソな話

「我々人間は潜在能力の10パーセントしか引き出せていない」

これはアインシュタインの言葉と言われていますが、ヘルマンス著『アインシュタイン、神を語る』にそう書かれているだけで、本人が実際に口にしたという証拠はないと言われています。アインシュタインが10パーセントなのか一般人が10パーセントなのかよくわかりませんが、とにかくこの言葉が次第に形を変えて、次のような神話となりました。


「人間の脳は10パーセントしか使われていない」

”10パーセント神話”と呼ばれるこの発想は、昔から映画や小説で使われていますが、ホントのところどうなんでしょう。10パーセントしか使われていないのでしょうか。どうしたら20パーセント使えるようになるのでしょうか。

映画『LUCY』における脳覚醒の描写

2014年に制作されたリュック・ベッソン監督作品『LUCY(ルーシー)』では、「脳が100パーセント覚醒した場合に人間はどうなるのか」をテーマにしています。スカーレット・ヨハンソン演じる主人公ルーシーは、マフィアの闇取引に巻き込まれて腹部にcph4という合成新薬の包み(1キロ)を埋め込まれます。運び屋をしている途中、腹を蹴られたことでcph4の一部が体内に漏れ出し、薬物中毒により脳が覚醒。徐々に脳の可動範囲が広がり、次々と特殊能力が使えるようになっていきます。

20パーセント覚醒・・・身体能力が著しく向上し、痛覚等の感覚を制御・遮断できる
30パーセント覚醒・・・エネルギーや電気・電波信号の流れを感じ、視覚的に捉え、操ることができる
40パーセント覚醒・・・他者の肉体をコントロールできる
50パーセント覚醒・・・人間を含めた全ての物質を自在にコントロールできる
60パーセント覚醒・・・空間・重力の制御ができるようになる
70パーセント覚醒・・・肉体の変形制御および物質との融合が可能になる  などなど

最終的に脳が100パーセント覚醒したときに起こることは・・・。以下は映画を参照のこと。

リュック・ベッソンの独自の想像力から生み出された解釈ですが、脳を100パーセント覚醒させることへの憧れと畏怖をリアルに表現しています。100パーセントをフルに使い切ったらどうなるのかは今のところ誰にもわかりませんから、こういう解釈もありということで。

脳を覚醒させた人間たちが登場するドラマ『SPEC』

映画化もされた人気ドラマ『SPEC』では、戸田恵梨香が演じる主人公の当麻紗綾が度々口にする常套句にも”10パーセント神話”が登場します。

「人間の脳は通常10パーセントほどしか使われてません。残り90パーセントがなぜ存在し、どんな能力(SPEC)が秘められているかまだ分かってないんです。」

この作品でも『LUCY』と同様に、脳が覚醒したら常人以上の力が発揮できて特殊能力も使えるようになる、という前提が物語の根底にあります。登場するSPECホルダーと呼ばれる超能力者たちは皆、脳の残り90パーセントも使いこなすことで、他人の心を読んだり、記憶を書き換えたり、はたまた時間を操作したりといった異能の力を手に入れています。

これも当然ながらフィクションの域を出ないわけですが、視聴者の願望も手伝ってか、この奇抜な設定自体はかなり好意的に受け止められました。

映画『リミットレス』にも脳覚醒の新薬が登場

脳を100パーセント覚醒させる驚異の新薬を手に入れた男の運命を描いた作品が『リミットレス』。脳を覚醒したことで小説界やビジネス業界で大成功を収めるが、薬の副作用に苦しみます。また、新薬を巡る陰謀にも巻き込まれていきます。

この作品では脳を100パーセント解放した主人公が超能力を使えるようになるわけではないのですが、100パーセントの覚醒状態を経験してしまった人間がその絶大な能力を手放すことができなくなるという描写がリアルです。そんな新薬があったら誰でも欲しいし、それが高価であればその新薬を手に入れるためだけに能力を費やすようになるという可能性は否定できません。

現代医学ではどのように考えられているのか

現在でも人間の脳のしくみについてはそれほど解明が進んでいるわけではありませんから、パーセントで考えることはできません。ただ、「10パーセントしか使われていない」という言葉の解釈については、放射線検査の進歩により変わってきています。

PET検査とMRI検査によって脳の働きを調べた実験では、一日を通して脳はその全体がまんべんなく使われているとのこと。ただし、脳全体を一度に使うようなことはなく、コンピューターの省電力CPUと同じで働かせる部分と休ませる部分があるのだと考えられています。また、右脳と左脳で働きが違うことや、脳の部分によって司る機能が違うという点も、その部分がそれに特化しているわけではないこともわかってきています。例えば右脳が損傷した場合は左脳が右脳の仕事を分担したり、脳の損傷した部分が司っていた機能を他の部分が代行することも症例として知られています。

→参考:The Ten-Percent Myth

つまるところ、新薬でも何でもいいので脳全体を一度に働かせられるほどのエネルギーを与えることができたなら、100パーセント解放することも可能かもしれないということです。あくまでも理論上のことですし、熱暴走して壊れちゃうかもしれませんが。

『LUCY』に登場するcph4という薬品は、母親の胎盤から抽出された成分をもとに作られたものでした。今は映画の中のことでしかない話ですが、近い将来に脳覚醒を促進する新薬が発明されないとも限りません。アルツハイマー治療の研究の副産物か何かで、ある日あっさり登場する可能性も・・・。

脳は90パーセントが使われないまま一生を終えるわけではなくて全体が同時に使われることがないだけ、というのが現代の正しい”10パーセント神話”の解釈だと考えられます。ヨガの修行などを通じて20パーセント使えるようになった人もいる、という話も聞きます。同時に使える領域を増やす方法もあるのかもしれませんが、普通のCPUは無理させずに使うのが、今のところは安全そうですね。

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