自衛隊を戦場へ送ろうとしている人々にお薦めしたい、米兵士たちの心の闇を浮き彫りにした映画『アメリカン・スナイパー』

戦争賛美?いやいやとんでもない。そういう映画ではありませんよ、これは。。

『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』『グラン・トリノ』など、観るものの心を鷲掴みにするような作品を通してアメリカの抱える問題や心の闇と真摯に向き合い、堅実に映像化してきたクリント・イーストウッド監督。今アメリカで空前のヒットとなっている、監督ならではの戦争映画『アメリカン・スナイパー』は、アメリカ映画史上珍しい、戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に焦点を当てた映画です。


物語の主人公であるクリス・カイルは、ネイビー・シールズに実在した伝説のスナイパー。アメリカの同時多発テロを目の当たりにしたことでイラク戦争への参加を決意したカイルは、2003年から2009年の間に計4回出征し、米軍史上最多の160人を射殺した「英雄」として帰還しました。退役後は民間の軍事会社を設立し、そこで得た収入の一部でPTSDに悩む帰還兵の社会復帰を促す慈善事業を行うなど、心に傷を負った兵士のために尽力。講演や執筆活動も精力的に行い、2012年に著した自伝『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手(原題:American Sniper)』は13週連続でベストセラーとなりました。

しかし、戦場での極度の緊張感や過酷な環境に晒されたカイルの精神と肉体は、帰国後の平穏な暮らしの中で逆に心身の不調を訴えるようになります。彼自身もPTSDに苦しんだ一人でした。

カイルは2013年2月、元海兵隊員エディー・レイ・ルースのPTSD治療の一環で射撃場に付き添っていた際、精神不安定だったルースに射殺されて亡くなりました。アメリカの英雄は38歳という若さで、自分が長年救ってきた兵士によって、戦場ではなく平和なアメリカ国内で命を奪われたのです。

→「最強の狙撃手」ら2人を射撃場で射殺、元兵士逮捕

アメリカでは現在でも、帰還兵の自殺が後を絶たないと言います。アメリカの年間の自殺者3万人のうちの25パーセントが復員兵だとする調査結果もあります。アメリカにとって兵士のPTSDは深刻な社会問題であり続けています。

→帰還後に自殺する若き米兵の叫び
→この現実を見よ! 戦争から戻っても自殺が絶えない米復員軍人

日本でも2003年から2008年までの間にイラクへ派遣された自衛隊員のうち25人が帰国後に自殺しているという報告があります。戦地体験と自殺との因果関係は明らかになっていません。

→イラク派兵から帰国後、自衛官の自殺26人


「法制度の不備により邦人の命を守れないことはあってはならない」

安倍首相は2月17日の参院本会議でこのように述べ、邦人救出や多国籍軍の後方支援などに自衛隊を派遣するための法改定に意欲を示しました。

戦争を知らない政治家が語った「自衛隊による在外邦人の救出」という突拍子もない話に対し、自衛隊の機関誌「朝雲新聞社」がコラムで次のように批判しました。

陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える

これまで国会で審議してきた『邦人救出』は、海外で発生した災害や紛争の際に現地政府の合意を得たうえで、在外邦人を自衛隊が駆け付けて避難させるという内容だ。今回のような人質事件での救出とは全く異なる

日本の自衛隊が少なくともアメリカ軍と同様の訓練を受けたり兵器を扱ったりしていないことは、誰でも知っています。実戦経験がないことも。にもかかわらず、人質救出のために戦地へ送り出されようものなら、どのような心的ストレスを受けるか想像もつきません。というか、気の毒すぎて想像したくもありません。

安倍首相が目指している日本がどのようなものなのか、我々には知る由もありませんが、戦闘に参加するということがどのようなことなのかを、判らないまでも理解しようと努力する姿勢が欠落しているとしたら、将来の若者たちはきっと恐ろしい体験をすることになるのではないでしょうか。

もちろん、そうならないことを祈っていますが・・・。

→自衛隊機関紙までも批判する安倍首相「安保法制」のお粗末

『ザ・インタビュー』も『アンブロークン』も入ってこなくて、かわりに『永遠の0』レベルの映画が持て囃される日本で、『アメリカン・スナイパー』だけは普通に入ってきました。戦争映画は観ない、という人もこの作品ぐらいはしっかり観て、戦争というものについてもう一度考えてみる機会にするのもいいのではないかと思います。

american
『アメリカン・スナイパー』公式サイト

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク