宮崎監督の引退作『風立ちぬ』がTV初放送したが、公開当時と変わらぬ賛否両論が逆に面白い

宮崎アニメとしては珍しく、賛否が同じくらいいると噂されている映画『風立ちぬ』が、20日にテレビでの初放映を済ませました。はて、今後再放送がどれくらいあるのでしょうか。

『風立ちぬ』は扱いが難しい作品らしく、宮崎監督の引退作品という意味合いもあって批判がタブー視されている感もあります。それだけ日本アニメ界における宮崎駿監督の存在は大きいということでしょう。神格化されてますからね。私もジブリアニメは全部好きです。


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”宮崎アニメの集大成”なのかどうか

ジブリアニメ史上5位となる120億円の興行収入を達成した『風立ちぬ』。公開当時は「ベストワンだと思えません」と評しただけで見知らぬSNSユーザーから攻撃を受けるようなこともあったそうです。『風立ちぬ』の良さがわからない人間は「分かってない」「感受性が豊かじゃない」とレッテルを張られたのだとか。今もそうなのでしょうか。

→『風立ちぬ』に批判コメントしにくい風潮をジブリファン嘆く

海外での評価も賛否両論で、ジブリアニメの人気が高いフランスでも、『風立ちぬ』の評価はジブリアニメ中のベスト8止まりだとか。

→「風立ちぬ」にフランス辛口評価 “2時間の燃え上がるメロドラマ”にトトロファン驚愕

アニメ作品としての評価が真っ二つ

乗りに乗っていた世界の宮崎が、ゴールデングローブ賞もアカデミー賞も逃した作品。日本アカデミー賞はもらえましたが、今の日本映画界では宮崎アニメにあげなければあげられる作品がないから、という話も。事実、2013年の「ネット民が選ぶ“一番面白かった2013年映画”」ランキングでは『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』に敗れています。

『風立ちぬ』の大きな問題点の1つは、ストーリーに問題あり、という声の多さです。

ゼロ戦製造への飽くなき探求心を軸に日本の立場から見た戦争を描いた作品ということで、海外からの風当たりも心配されました。監督自身は「ノミネートされただけで光栄」とのことでしたが、アニメーションの技術は評価されても、肝心のストーリーに対する評価が分かれます。

「ゼロ戦を造った責任というものに全く向き合っていない、緩いラブストーリー」
「戦争の悲惨さに目をつぶり、飛行機への憧れでごまかしている似非メルヘン」
せっかくの宮崎アニメだから真剣に観よう、と思った人ほど落胆は大きかったようです。堀辰夫の『風立ちぬ』をモチーフにして、実在の人物である堀越二郎の半生を描いた珠玉のストーリーだったはずなのですが、残念ながら監督の描くラブストーリーは今の若い世代に歓迎されたとは言えませんでした。

思うところあってなのか、取ってつけたようなジブリらしくない初夜の描写も、そこはかとなく匂わせる大人のラブストーリーを期待したファンには不評なだけ。飛行機オタクにしては恋愛に対して妙にソツがないというのもご都合主義だと捉えられがちでした。

「キスシーンは最初のだけでよかったんじゃないかと思う」
「イチャイチャしすぎやろ」
「夫婦のシーンは全部いらんかったな」
「後半は狂い死にするかと思った」

意見は人それぞれですが、全世界のジブリファンが諸手を挙げて賞賛したわけではないことは確かです。

学生の貰いタバコのシーンや、結核患者の前でタバコを吸うシーンをあえて作ったのも、時代背景に忠実にというより、喫煙者である宮崎監督の意地でしかないように思えます。喫煙者にとって、タバコを吸うシーンほど大切なものはありませんから。ちなみに実際の堀越二郎は非喫煙者だったとのこと。ついでに堀越二郎の奥さんは長生きしたということです。

ゼロ戦が完成して、いよいよ『紅の豚』ばりの空中戦シーンか、と思いきや・・・。戦争についてもゼロ戦についても、絶妙のタイミングで挿入される夢のシーンでなんとなくお茶を濁され、そのままいつの間にか終戦、そして「生きねば・・・」でエンド。空中戦を期待したファンを裏切るような肩すかしは「ゼロ戦に誇りを持ってはいけない」という宮崎監督の意図があったという話もありますが、娯楽作品としては「中途半端」「ごちゃまぜ」「ゼロ戦と恋の融合が成されていない」といったマイナス評価が優先されるのも致し方なし、という感じです。

否定しようのない主演声優の問題

もう一つの問題が、声優です。堀越二郎の声を演じたのは『エヴァ・・・』監督の庵野秀明氏。擁護の声もごく少数あるものの、公開時から世間の評価は「棒読み」をすっ飛ばして「最低」レベルにまで及ぶものでした。今回のTV放送後も、ネットには次のような意見が吹き荒れました。

「こんなに感情移入できなかったのって初めてかも 酷い」
「最後まで馴染まなかったわ 気になって話が入ってこない」
「聴いてるうちに良くなってきた、とかわけ知り顔で言い出す奴が湧いてきて困る」
「あまりの素人ぷっりに映画にはまり込めず、途中からCSでほん呪みたわ」
「西島入ってて良かったわ 庵野ひとりじゃ 支えきれない作品」
「庵野に依頼した奴と断らなかった庵野が悪い」
「主人公の声優さん選びなおして、再録音してくれないかなあ」

素人声優を起用するのは宮崎監督の十八番ですが、庵野氏の起用には単なるアニメ監督つながりというか、「奇をてらう」感が匂いすぎて、ちょっと納得できない気はします。『となりのトトロ』の糸井さんとは状況が違うような・・・。

瀧本美織さん、西島秀俊さんの評価は高かっただけに、たった一人の起用が結果的に大切な作品の評価を下げることになったことは、監督責任を問われてもしょうがありません。


ジブリ作品への期待は大きいので、がっかりした人も多かったと思われる『風立ちぬ』。今まで滅多にアンチを生むことがなかった宮崎アニメが、最後の最後に好き勝手にぶっちゃけて崩壊した、という見方もあります。これまで頑張ってきた監督の、自分へのご褒美という見方もあります。

観客全員からハナマルを貰えるようなアニメ作品が存在するわけはないですから、賛否が分かれるのは当然。逆に賛否が分かれた方が作品としては印象深く、注目されるというものです。でも宮崎監督の引退作品なんですね、この『風立ちぬ』は。宮崎アニメのくせに評価が分かれ過ぎなのは、やっぱり残念な感じです。なんとかして、もう一作だけでも作ってみてくれないですかね。

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